めしばな刑事タチバナという漫画に、カレー大好きな早川という脇役の男が登場する。
雑食であらゆるB級グルメを評論的に食べる主人公タチバナは、物語内の登場人物達(&読者)にわかりやすく説明するために自分ランキングを交えて食べ物を語る。俺の一番好きな牛丼は~~~の~~~だ!なぜならこれこれこうだからだ!というように。
しかしカレー好きの早川はランク付けをしないため、なぜランク付けをしないのかを主人公に問われると「世の中にまずいカレーは存在しなくて、カレーをまずいって言う人がいるだけだ」と根本として比較の問題には踏み込まない。
ここまでは前置き。
盛大にRTされているこんなツイートが目に入った。
「アニヲタですか?」 腐女子「(今期3タイトルしか追えてないし)いいえ」 アニヲタ「(ここ10年くらいのアニメは全部見てるけど、それより前のわかんないし…)まぁ、人並みに見ますね…ヲタというほどではないですが…」 一般人「(ワンピース見てるし)アニヲタっすよ(笑)」
— ダンジョンモォォンスタァアァアアアアアさん (@spn_ahk) 11月 19, 2012
別にアニオタを名乗ることが悪いわけじゃないですし、これもネタだと思いますが、実際有り得そうな話で。このツイートで特に面白いのが、アニオタなのに「ヲタというほどではないですが」という所。じゃあ彼はどこまでいけばオタクだと思うのか?それはオタク第一世代の知識に追いつき、対等に語れるようになるという知識面?若しくは稼いだカネ全て趣味に捧げる覚悟or趣味を生涯の仕事とする覚悟を持った時。かな?と思います。
安易にアニオタを名乗っちゃう人は何が違うのかと考えると、オタクの定義が違うとか断じてしまえば簡単ですが、オタク is dead・・・ではなく、本物のエリートが近くにいなかったり、観測範囲が狭すぎるという話でもあったりだと思います。もし趣味に命を捧げる本物のオタクを知っているのであれば「それと比べたら自分なんかはとてもとても」という謙虚さが。知らないのであれば”上”を知るという視点を広げる術が足りないのかなーなんて不思議に思いました。
不思議。だってデジタルネイティブとか言われて、物心ついた頃からインターネットが存在しているボーイズエンガール達が狭い世界で生きているだなんて、なんとも不思議じゃないですか。そもそもアニオタってなんだ?とかてへぺろってどこから来た言葉なんだ?みたいな、語源を辿ろうと思わないのかな。これは偉そうに政治や経済にツッコむ己に自戒を込めて、ですが。
さて、冒頭のカレー好きの人がランク付けをしない話と繋げ、そして私怨のような事ですが、「アトムから始まって今現在の深夜アニメまでほとんどチェックして評論している」ような人がいて、「アニメ好きすぎて自分で作っちゃった」みたいな魔物がウジャウジャといる世界で、自称アニメ沢山見ていますボーイが『僕の好きなアニメランキング』というハリボテの城をぶち建てちゃうなんて恐れ多い。並ぶ作品は全部2000年以降の作品(そういう人が最近居た)
ましてや全くもって基準や前提を示さずに只々作品名と順位だけのランク付けをしてしまうという。嗚呼、なんという恐怖。(ゼロ年代アニメランキングとか明示してれば全然いいんですが。その場合はもちろんその年代のアニメをほとんどを見ている前提で)
「何が恐怖なの?」という思いもありますが、個別の作品を批判したり褒めたりは全然問題ありませんが、それぞれの作品を比べてランク付けをしてしまう事を、たかだか10年そこらの作品の範囲内で若造がやってしまうのです。エンディングにクレジットされている人達の名前を見て、何人の人が関わって命注いでいる作品なのか気にしないのかな。どういう基準で選んだのか何が劣っていたのか示さないと納得いかんですよ。なんと恐れ多い。恐れながら申し上げて欲しい。
その点前述のマンガにおいては、主人公タチバナは前提や基準や理由がしっかりと描かれているので好きです。
また話は脱線しますが、そういった昨今の、”一般人「あ、俺アニオタっすよw」”という人々の出現は、日本のマンガやアニメなどが世界各国で認められ、文学や映画のようにひとつの趣味として市民権を得た事、そしてYoutubeやニコニコ動画に代表される動画共有サイトの巨大化に伴って勢力を増し、さらに深夜アニメの大量生産大量消費と相まって、「沢山の作品を見ている俺アニオタ」という自負にも繋がり、ゼロ年代以前の作品に触れていない歴史の連続性を無視した自称アニオタが蔓延る原因になっていると思います。なんつーことはそこら中で書かれているとは思いますが書かずにはいられなかった。更に突っ込むと、上のツイートではワンピースですが、分かりやすくする為に作品名を上げさせて頂きますが、涼宮ハルヒの憂鬱、とらドラ!、化物語が入り口の人達じゃないかな(それぞれ素晴らしい作品だと思いますが)。
いえ、逆にこのインターネット環境&DVDレンタル50円~100円のお陰様で過去作品を振り返る手段が安易になり、ウルトラQからのウルトラマンシリーズ全話見ていたりする小学生がいる時代でもあり、前世代の人の知識に(ある程度)追いつく方法は簡単になりました。しかしねぇ、それをやっていないゼロ年代以降の作品のみを基準に偉そうに『俺様ランキング』を語りってしまう人々がねぇ、たまらなく恥ずかしいんですよぉぉぉぉ~・・・
とか偉そうに言ってしまっている事も、さらに自分が似非オタクとか名乗っている事も恥ずかしいんですよぉぉぉぉ~
ひたすら批判をしましたが、それで私が溜飲を下げるのはこのブログが私のものだからです。でも本当はね、自分ランキング良いよ!私もランキングが好きだ!あなたの好きなもの、どういった理由で好きなの?それとそれを比べてどういった理由でその順位なの?なぜその作品の方が上なの?是非とも語って欲しい。知りたい。自分の”好き”をもっと「理由を付けて」ぶっ放して欲しい。
その自称アニオタさん達のおかげでアニメ作品という共通言語を持って若い世代と交流出来る事や、アニメやマンガを担う世代が続々と成長していること、そしてソーシャルビューイング的な多くの人々と一緒に作品を楽しむような、新しい作品の消費の仕方が生まれてきたのは嬉しい限りです。なので。せっかく、なので。さあ過去の作品も見てみましょう、一緒に。
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